
こんにちは、Infragisticsソリューションコンサルタントの田上です。
本記事は、主に Windows FormsやWPFのデスクトップ開発者、および ASP.NET Web Forms開発者 といった、Microsoftの.NET Frameworkを利用している開発者の方々をターゲットにしています。日本国内でも、未だにこれらの世代のシステムが稼働しており、サポート切れが迫っているため、現状と今後の選択肢について整理してお伝えします。
- 1. このブログの読者層と背景情報(Windows Forms/WPFおよびASP.NET Web Forms開発者向け)
- 2. 「.NET Framework 3.5」のサポート切れ問題
- 3. 「.NET Framework 4.8」までのバージョンアップが現実的
- 4. 「.NET Framework 4.8」のサポート状況に依存するリスク
- 5. ASP.NET Web Formsのサポート切れ問題
- 6. 「.NET 8」や「.NET 9」を目指すには新規マイグレーション規模の予算が必要であり、対応方針に悩む声も多い・・・
- 7. WebのMicrosoft Blazorをコード生成できるAppBuilderとは
- 8. App Builder + Blazor 運用で得られるメリットは?
- 9. 具体的なシナリオ「.NET Framework 資産」を未来へつなぐ
- 10. まとめ
1. このブログの読者層と背景情報(Windows Forms/WPFおよびASP.NET Web Forms開発者向け)
まず、この記事では 2つの異なる開発者層 を想定しています。
- Windows Forms/WPF開発者: デスクトップアプリケーションを中心に開発してきたエンジニアの方々
- ASP.NET Web Forms開発者: Webアプリケーション(主に社内向けシステムや企業サイト)の開発経験があるエンジニアの方々
日本国内では、まだ多くの企業でこれらの世代のアプリケーションが稼働しており、「.NET Framework サポート切れのリスク」が迫っています。どちらの開発者も、今後の戦略を考える上で情報を共有する必要があります。
- Windows Forms/WPF開発者 にとっては、デスクトップ資産を維持しつつ、将来的にはWebへの移行も視野に入れる必要があります。
- ASP.NET Web Forms開発者 にとっては、既存のWeb資産を活かしながら、新しいフレームワークやクラウド対応を検討する必要があります。
この章では、まず読者がどの層に属しているかを意識していただき、以降の内容を自分ごととして理解していただくことを目的としています。
2. 「.NET Framework 3.5」のサポート切れ問題
.NET Framework 3.5 SP1は、特別に長期サポート(LTS)対象とされ、2029年1月までセキュリティ更新が提供されます。しかし、初期の3.5や2.0/3.0系は既にサポート終了しており、セキュリティリスクは非常に高い状態です。 多くの企業システムは依然としてこの世代で稼働しており、放置すると重大なトラブルにつながりかねません。
ポイント
- 3.5 SP1は2029年1月までサポート
- それ以前の2.0/3.0/初期3.5はサポート終了
- サポート切れはセキュリティ更新が提供されなくなるため危険
ここで重要なのは「3.5 SP1だけは例外的に延命されている」という点です。多くの企業では「まだサポートされているから大丈夫」と誤解しがちですが、初期の3.5や2.0系で動いているシステムはすでに危険領域に入っています。
よくあるリスクの具体例
- 取引先からのセキュリティ監査で指摘を受ける
- サードパーティのライブラリがすでに非対応
- 最新Windows OSへの移行が困難
特に金融や流通など外部接続が必須の業種では「外部接続禁止」や「隔離環境での運用」といった回避策を取らざるを得ず、結果的に運用コストが膨れ上がるケースも見られます。
3. 「.NET Framework 4.8」までのバージョンアップが現実的
こうした状況の中、多くの企業が最初のステップとして選ぶのが .NET Framework 4.8 までのバージョンアップ です。
理由
- 互換性が高い:既存のWPF、WinForms、ASP.NET Web Formsアプリを大きく改修せずに済む。
- サポートが継続:OSに組み込まれた4.8は「OSサポートと同じ期間」セキュリティ更新が提供されるため、長期間安心して利用できる。
- 周辺ライブラリとの整合性:多くのサードパーティ製コンポーネントや社内共通ライブラリは 4.x 系を前提に設計されているため、移行リスクが低い。
実際の現場での活用
- 段階的移行の「安全策」 として、まず3.5→4.8に統一する企業が多い。
- その後、余裕ができた段階で .NET 6/7/8/9 以降への移行を検討する流れが一般的。
- 要するに、4.8へのアップデートは「延命策かつ将来への布石」として非常に現実的です。
つまり、4.8へのアップデートは「安全な延命策」として現実的であり、コストやリスクも比較的低く抑えられます。
4. 「.NET Framework 4.8」のサポート状況に依存するリスク
ただし、4.8への移行で安心しきるのも危険です。理由は「技術的な進化は止まっている状況」であるからです。
- セキュリティ更新は継続される
- 新機能の追加は一切なし
- クラウドやモダンアーキテクチャとの親和性は低い
そのため「しばらくは使えるが、長期的な将来像は描けない」というリスクが残っているのが実情です。
5. ASP.NET Web Formsのサポート切れ問題
次に、Webアプリケーションの ASP.NET Web Forms は、長らく企業イントラやB2Bポータルで多用されてきました。しかし現在では以下の問題があります。
- Web Forms自体の新機能は提供されない
- 最新のWeb標準(SPA, REST, WebAssembly等)と相性が悪い
- 開発者が減少しており、採用・保守が難しい
つまり「動かすことはできるが、新規開発や長期利用には適さない状況」にあると言えます。
実際、国内の大企業では「Web Forms資産が膨大でマイグレーションを先延ばしにしている」という声が多く、社内システムをそのまま延命しつつ、新規開発は .NET Core / Blazor / React へシフトする二重構造が生まれています。
ASP.NET Web Formsも.NET Frameworkの一部であり、4.8のサポート期間中は引き続き利用可能です。しかし、Web Forms自体の新機能は提供されておらず、将来的な移行を検討する企業が増えています。つまり、Web Formsも 現状は安全だが、新規開発や将来性の面では制約が大きい 状況があると言えるでしょう。
6. 「.NET 8」や「.NET 9」を目指すには新規マイグレーション規模の予算が必要であり、対応方針に悩む声も多い・・・
一方で、.NET 8や9を目指す場合は単なるバージョンアップでは済まず、大規模なマイグレーションが必要になります。理由は以下の通りです。
移行のハードルとなる課題
- API互換性が大きく異なる → 大量のコード修正が必要
- 非対応技術が存在する → WCF、Web Forms、Windows専用APIは利用不可
- UIを全面的に作り直す必要あり
- 技術者の習熟コスト(Blazor、.NET Core、新しいツールチェーン)が必要
予算感の課題
単純な 4.8 へのアップデートに比べると、数倍〜十倍規模の予算・工数 を覚悟する必要があります。特にWeb Formsからの移行は、UIをゼロから設計し直すことがほとんどです。
つまり「最新を目指す」には大きな投資が不可欠ですが、予算も工数も4.8への単純アップデートの数倍規模になってしまい費用が大きく膨らむのが現実です。その結果、移行計画を先延ばしにせざるを得ない現場も多くあります。
ベストな移行先プランは?
ベストな移行先はどのフレームワークなのでしょうか? 何年経過しても普遍的なWeb技術が好ましいと思われますか?
- Java?
- Web Components?
- Type Script?
それでは、私たちInfragisticsの提案する移行プランをご紹介します。
7. WebのMicrosoft Blazorをコード生成できるAppBuilderとは
Infragistics では新たな移行先フレームワーク+開発プラットフォームとして「App Builder(ローコードデザイナー)+ Ignite UI for Blazor(C#)」をお勧めします。Microsoft社のBlazorフレームワークは、SSRとCSRの選択が可能なフレームワークであり、Microsoft社のC#に慣れている開発者が多い場合に、優れた移行先となります。
- App Builder ・・・ローコードデザイナー(Web開発での専用デザイナー、Blazorコード自動生成)
- Ignite UI for Blazor ・・・洗練されたUIライブラリ(Blazorコードベース)
7.1 Blazor 理解図


7.2 App Builder の概要を知るためのハンズオン
App Builderの概要について、先ずはコチラからハンズオンで概要を知ることができます。
つまり・・・
つまり、同じように「大規模なマイグレーション予算」をかけるなら「単なる.NET 8/9への最新化よりも、Blazor+AppBuilderによるWeb化」が効率的な場合も多いのです。
8. App Builder + Blazor 運用で得られるメリットは?
App Builder(デザイナー、コード自動生成)とIgnite UI for Blazor(洗練されたUIライブラリ)の組み合わせはとても強力です。以下にメリットをいくつか挙げてみます。
- デザイナー感覚でUIを作成可能(プロトタイプ制作コストを大きく削減)
- 完成されたUI部品(例:グリッド)をドラッグ&ドロップで配置できる(デザイン工数を大きく削減)
- 描いたデザインをそのままコード自動生成(Blazor/React/Angular/Web Components)できる
- BtoBレベルの業務アプリケーションのプロダクションコード一式が自動で手に入る(開発速度UP)
- 自動生成されたコードは即時ビルド可能、さらにVisual Studioで高度なカスタマイズも可能
- UI部品は全てInfragisticsでテスト完了済みの高機能なUIコンポーネント(単体テスト工数を大きく削減)
- UI部品は全てApp Builder 上でRestAPI連携も可能、APIエンドポイントのコードも自動生成される
- Webアプリ開発効率を70%向上しつつ、移行コストを大幅に削減できる
- 低コストでIT設備投資できるWebアプリ開発のゲームチェンジャー

9. 具体的なシナリオ「.NET Framework 資産」を未来へつなぐ
9.1 .NET開発者が新しいWeb開発へ移行する上での課題は?
.NET開発に慣れてしまった開発者が、Webフレームワークへ移行を検討する場合に以下の課題があります。
- Windows FormsやWPF開発者は「Visual Studio+プロパティ設定への依存」が強く、コードベースのWeb開発にキャリアを転換しずらい
- ASP.NET Web Forms開発者は、Web技術を理解しつつも、部品の共通化や再利用性は低く、開発速度が速いとは言えない現状がある
この2つの課題については「9. 具体的なシナリオ」で2つのアプローチ解決策を掲載しています。
9.2 移行シナリオの全体像
まだまだ多くの企業には、.NET Frameworkで作られたアプリが残っています。 大きく分けると、次の2つに分類できます。
- デスクトップ系(WPF/Windows Forms)
- Web系(ASP.NET Web Forms)
それぞれに合った 「現実的なモダナイズのシナリオ」 を紹介していきます。
9.3 パターン1:WPF/WinForms → App Builder(デザイナー/コード自動生成)によりWebアプリケーションへ移行するシナリオ
まずはデスクトップアプリ資産を、クラウドネイティブなWebアプリへ進化させるシナリオです。
ポイント
ここで活躍するのが Infragistics App Builder です。App Builder を使えば、既存のUIを効率よくWebベースに移行できます。
- 既存アプリをWebアプリにドラッグ&ドロップでUIを再デザインするができる
- C#をベースにしたBlazorを選択することで、移行後も使い慣れたVisual Studioを活用できる
- Blazor/React/Angular/WebComponentsといったモダンフレームワーク向けのコードを自動生成できる
メリット
- 新しい技術の学習コストを抑えつつ、短期間で移行可能
- UXをアップデートできるだけでなく、保守や拡張もしやすくなる
9.4 パターン2:ASP.NET Web Forms → Blazor + App Builder(フロントエンド) + Microsoft Data API Builder(バックエンド)の両方を移行するシナリオ
次はWebアプリ側のシナリオです。レガシーなWeb Formsを、C#を活かした形で最新化する方法です。
ポイント
- Microsoft Blazor を使うことで、C#でフルスタックのWeb開発が可能に
- App Builder によるローコード開発で、UIとコードを自動生成できる
- Microsoft Data API Builder でバックエンドAPIを自動生成し、既存DBをREST/GraphQLとして利用可能
メリット
- 大規模なWeb Forms資産でも、コード自動生成を活用することで移行ハードルを下げられる
- 既存のC#資産を引き継ぎながら、最新のWebフレームワークへスムーズに移行できる
- フロントとバックエンド両方の効率化が進み、開発全体の生産性がアップ
9.5 まとめ:資産特性に応じた「現実解」を選ぶ
- デスクトップ資産には → パターン1(App Builder中心のWebアプリ移行)
- Web資産には → パターン2(Blazor + App Builder + Data API Builderでモダナイズ)
どちらのアプローチも、既存資産を「未来へつなぐ」ことができます。
10. まとめ
- .NET Framework 3.5以前は既にサポート終了
- 3.5 SP1は2029年1月までサポートされるが、早めの対策が必要
- 現実的には 4.8までのバージョンアップが延命策
- Web Formsも同様に、現状は安全だが将来性は限定的
- .NET 8や9を目指す場合は大規模マイグレーションが必須で予算・工数が大きい
- 予算効率を考えるなら Blazor+AppBuilderでWeb化する方法が有力
現場では、まず4.8への統一を行いながら、新規開発や大規模リプレイスでBlazorやAppBuilderを活用するという二段構えの戦略が現実的です。これにより、セキュリティリスクを抑えつつ、将来的なWeb対応・クラウド対応も見据えた開発が可能になります。
現場のシステム状況に応じて、早めの移行・バージョンアップ計画を検討しましょう。
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