インフラジスティックス・ジャパン株式会社Blog

インフラジスティックス・ジャパン株式会社のチームメンバーが技術トレンド、製品Tips、サポート情報からライセンス、日々の業務から感じることなど、さまざまなトピックについてお伝えするBlogです。

イベントレポート: ユーザの要件変動と人材不足をどう乗り切るか? | 開発ローカル情報、毎月キャッチアップ(2025年10月号)

イベントレポート

開発ローカル情報とは、インフラジスティックスが日々お客様と対話する中でよく耳にする、開発現場の小さな領域に限定したトピックを掘り下げて共有する特集です。

今回は、2025年7月のオンラインイベントレポートをお届けします。このイベントでは、開発現場で色濃い課題の実態と解決策について、調査データを基に対談が行われました。レコーディング全編も配布しています。

まとめ

  • システム開発の最大課題は今もなお「要求の頻繁な変更」「納期短縮」
  • 人手不足の状況下でユーザ要件がより厳しくなる矛盾した現状
  • 背景として業務アプリ導入の重視要素に「データドリブン」と「使い易さ」
  • AI開発は開発速度向上するも「再利用性」に課題あり
  • ノーコード/ローコード開発は個別開発に陥り、野良アプリが乱立しやすい
  • 部品活用開発で工数削減だけでなくテスト自動化やDevOps実現にも貢献
  • BI機能製品が独立し、ツールスイッチングコスト増加の抑制が鍵

以下は、詳細レポートです。とても長いため、YoutubeのURLで提供されるレコーディング全編を取得いただくと、ラジオ代わりに聞いていただくことが可能です。

開発現場が直面する二重の困難

開発現場が直面する二重の困難

国内ISV/SIer200社を対象とした調査によると、システム開発における最大の課題は「ユーザーからの要求内容が頻繁に変わる」「ユーザーからの納期が短くなっている」「要件定義がなかなか決まらない」でした。インフラジスティックスのアズマは「人手が足りない状況でユーザー要件がより厳しくなっている」と現状を分析しました。この一見矛盾した状況の背景には、ユーザー企業側の変化にも要因があります。

ユーザー企業が求める「データ分析」と「UI」の高度化

ノークリサーチのシニアアナリスト、岩上氏が1,300社のユーザー企業調査結果を紹介したところ、業務アプリケーション導入で重視される要素の上位に「データドリブン経営の実現」「使い易さ」が挙げられました。

政治や貿易、ビジネス環境が日々変化する

政治や貿易、ビジネス環境が日々変化する中で、経営層は常に最新のデータを経営に生かしたいと考えています。岩上氏は「リアルタイムに変化する経営層の需要に応えるため、企業はより高度なデータ分析機能を求めている。また、UIについても、人材不足の背景から、少ない人数やアルバイトの方でもすぐに使いこなせるシステムが求められると」説明しました。

AI開発への期待と限界

昨今の AI 駆動コード自動生成への期待について、両氏は慎重な見解を示しました。岩上氏は「AI でコーディング工数を圧縮できても、ユーザーが重視する ” 再利用性 ” が伴いにくい」と指摘します。

AI開発の期待と限界

AI によってコードを生成する際に、特定のフレームワークに過度に依存するようなコードが作られると、この「不変性・汎用性」の要件に反する可能性があるのです。 AI による開発速度向上は評価できるものの、ゼロから作ったオーダーメイド品では結果的に開発工数が増える懸念があることが両氏の見解でした。

UI開発における課題と対策

UI開発課題調査では、「高度なUI部品の自作」の困難さや「UIの標準化」が上位を占めました。特に、データのロジック処理と見た目のフロントエンドが適切なセットになったUI部品の自作は、多くの開発企業にとって高いハードルとなっています。

UI開発の課題調査

アズマは「UIライブラリによる部品活用開発により、これらの課題を解消できる可能性がある」と説明しました。独自規約は形骸化しやすいが、体系化されたUI部品を活用することでデータのやり取りや裏側の開発部分も含めたデザインシステムのような仕組みの構築も可能になると提案しました。

ノーコード/ローコード開発の限界

近年注目されるノーコード / ローコード開発についても言及されました。

ノーコード、ローコード

ノーコード/ローコード開発と部品活用開発の違いについても整理されました。ノーコード/ローコード開発は「どうしても制約が生じ、結果的に個別開発に陥りやすい」ことが懸念です。特定プラットフォームへの依存によって、本来避けたかった個別カスタマイズが結局必要になってしまっては元も子もありません。

アズマからは、簡単にアプリケーションが作れてしまうノーコード/ローコード開発だからこそ「野良アプリ」が乱立して管理が難しくなった過去の失敗も紹介されました。

 

「自分たちでコードを持つ」部品開発アプローチの重要性

部品活用開発

解決策は「単一のツールでシステム構成要素の全てを無理にカバーしようとしないことが重要」です。UIの開発では「柔軟な部品選択が可能なUIライブラリの活用」、BIの開発では「適切なレベルでの重要データ選別・集約を行う組み込みBI」がソリューションとなります。これらのアプローチにより、特定プラットフォームに縛られることなく、それぞれの分野で柔軟な手段を選択することが可能となるのです。

開発効率向上とDevOpsへの貢献

部品活用開発のメリットは、開発工数削減だけにとどまりません。アズマは「体系化したUIの維持は、テストや保守などの全体工程との連携にも役立つ」と説明します。UI部品が標準化されることで、テストスクリプト自動生成や、デザインシステムのような仕組み化が可能になり、DevOpsの実現にも寄与します。

データ分析分野では「組み込みBI」という選択肢

BI機能の開発課題

データ分析機能についても、「BI機能のUIに対するユーザーの要求レベルは非常に高い」という課題が存在していました。また、さらに大きな課題として「処理性能を担保した高品質なUI実装」が困難であることも明らかになりました。

BIは使い手側にも課題あり

興味深いのは、ユーザー企業側から見たBI製品の利用課題でした。調査から、ユーザーの課題は「複数ソースからのデータ取り込み作業」と「分析データの判断」が上位を占めます。汎用的なBI製品では「他システムからデータを取り込むスキルを持ったユーザーでないと使いこなせない」という実態が浮かび上がりました。

複雑なBI機能

ユーザー企業はBIの活用において「データ分析の知識がないユーザーはBIを使いこなせないことがある」また「人口動態データ・Webサイト/SNSデータ・業務システムデータなど、様々な場所に分散したデータを統合したり、どのデータを分析すべきか判断したりすることに課題を抱えている」ことが確認できました。

BIツール変遷の過程

では、なぜBIは現在ユーザーにとって使いこなせないツールとなってしまっているのでしょうか?帳票としてのBI

かつてBI 機能は、帳票機能のように業務アプリケーション内に組み込まれていました。

しかし、データ分析の需要が高まりBI機能が高度化するにつれて、BIは独立した専門ベンダーの製品として提供されるように。この独立により、利用方法が煩雑になり、BIの活用が困難となる要因となったのです。

業務で毎日使うデータは意外と限られている

アズマは、このような状況を解決するアプローチとして「組み込みBI」を提案しました。BI機能が外部のアプリケーションにあれば、ユーザーがビジネス判断をする窓口が普段使っている業務アプリケーションではなくなります。

ツールのスイッチングコスト

開発企業がセルフBI機能を業務アプリケーションの中へ装備し、ユーザーが「ビジネス判断を下すために別のアプリへ移動しなければいけない」分断状況(ツールのスイッチングコスト増加)を防ぐことは、ユーザーが普段使っているアプリが最も重要なマスタデータや業務画面であり続けることのメリットがあると説明しました。

デモの実演

システム開発の最大課題である「要件変動」と「納期短縮」の要因となるUI開発とBI機能実装において開発生産性を向上させるインフラジスティックス製品の実演も行われました。

UIライブラリの実現

UIライブラリ:データ一覧表示の階層化を実演

システム開発の最大課題である「要件変動」と「納期短縮」の大きな要因であるUI開発とBI機能実装において解決策となる「UIライブラリ」と「組み込みBI」のデモンストレーションが行われました。

組み込みBI:AIによるグラフ生成の実演

AIによるグラフ生成の実演

レコーディングからは、これらのデモも全てご覧いただけます。