この記事は、UIライブラリの基本概念から最新のUIライブラリ利用動向、導入のメリット・デメリットや選定のポイント、さらにUIライブラリの基本的な導入ステップを網羅するUIライブラリ完全ガイドです。
UIライブラリにおける情報を完全網羅しているため、非常に長いです。サマリを把握したい方はこの記事をコピーして、ChatGPT や NotebookLM から必要な分だけ抽出するなどされてくださいね。
- UIライブラリとは?基本概念と役割
- UIライブラリを使うメリット
- UIライブラリを使うデメリット
- UIライブラリの主な種類と選定基準
- 有償UIライブラリの選定基準
- UIライブラリは試用期間を設定しよう
- まとめ|UIライブラリ導入で開発効率を上げよう
UIライブラリとは?基本概念と役割
UIライブラリの定義
UIライブラリ(User Interface Library)とは、Webアプリケーションやデスクトップアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)を構築するための、再利用可能なコンポーネントを集めたライブラリ です。ボタンやフォーム、グリッド、ナビゲーションバー、チャートなど、一般的にソフトウェアを構築する際に必要となるUI要素が設計・開発されてライブラリとなっており、開発者はこれらを組み合わせてソフトウェアを実装することで、ゼロからUIを構築する手間を省き、効率的にデザイン統一がされたアプリケーションを作成できます。
React、Angular、Blazor、Web Componentsなど、それぞれのフロントエンドフレームワークに最適化されたUIライブラリが存在しています。
2025年、UIライブラリ利用者の動向
では、UIライブラリの利用者動向は現在どうなっているでしょうか。
例えば、最も利用率が高いと報告されている React*1 に対応する Material-UI(MUI)のダウンロード数は、2021年に月次で1,080万ダウンロード*2の規模でしたが、2025年現在は週次で580万ダウンロード*3と、利用者が4年で約2倍となっています。
デスクトップアプリからWebアプリへの移行など、利用者増加の要因はさまざま考えられますが、総じて、シェアNo.1のフレームワークにおいても、UIライブラリの利用者が増えていることがわかります。
デザインシステム、UIライブラリ、スタイルガイドの違い
デザインシステム、UIライブラリ、スタイルガイドは、どれもデザインの統一性と設計効率化を目的としたツールや概念でそれぞれ深く関連しながらも適用される粒度や役割には違いがあります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
手法 | 領域 | 特徴 |
---|---|---|
デザインシステム | ソフトウェア ハードウェア |
ソフトウェアに限らず、ハードウェアのデザインにも適用される。企業が自社のデザインシステムを持つことも多く、ユーザが製品と関わる際に抱く印象を統一する。企業がデザインに対してどのような哲学を持つかを包括的にまとめる。 |
UIライブラリ | ソフトウェア | 具体的にUIの開発実装レイヤーに特化して、グリッドやボタン、フォーム、チャートなど再利用可能なコンポーネントを集めたもの。 React のMaterial-UI などに代表される。 |
スタイルガイド | ソフトウェア ハードウェア |
UIに限らず、デザインシステムを視覚的に実現するための設計図。ソフトウェアであればボタンに対しての余白サイズの設定などを規定し、Apple社によるHIG(ヒューマンインターフェースガイドライン)などに代表される。ハードウェアであれば印刷時のロゴの特色値なども規定する。 |
UIライブラリだけがソフトウェア領域の対象となっており、デザインシステムやスタイルガイドはソフトウェアの文脈で語られることが多いものの、車に代表される工業製品などのハードウェアにも適用されているのが特徴ですね。
UIライブラリを使うメリット
UIライブラリを導入するメリットには、効率面・デザイン面・保守面などのそれぞれのメリットがあります
1.開発効率の向上
UIライブラリにはグリッドやチャート、ボタン、タブなどあらかじめコンポーネントとして設計された部品が多く含まれています。どの業務システムでも使用することの多い基本的なUI要素をゼロから開発する必要がなくなります。
インフラジスティックスのUIライブラリを導入した株式会社リコー様は、UIライブラリが標準搭載していたステッパーコンポーネントを活用して、「実装時間を約1/3に削減できた」と語っていますし、株式会社YEデジタル様も同様に「低コスト・短期で実現することができた」と語っています。
2.一貫したデザインの維持
それぞれの部品がすでに設計・開発された状態でUIライブラリとしてまとまっているため、UIが設計者ごとにバラついたりせず、「誰でも一定の高品質なレベルのUI」を開発できます。
導入企業である株式会社日立製作所様は、「画面のデザインや操作性において難ありとのご意見をいただき、受注に繋がらないということがあった。これではいけない、ということでUIライブラリの導入検討に至った」と話しています。
【詳しくはこちらから】大量かつリアルタイムデータの表示が求められる電力監視・制御システムの操作性を大幅に改善 | 株式会社日立製作所
3. 要件の標準化
ユーザーの立場や利用環境の多様化でUIのパターンが増えすぎた結果、期待値が膨らみすぎてしまうことも少なくありません。特に業務システムでは、管理者・承認者・閲覧者といった役割ごとの操作性を考慮する必要があり、要件の整理が一層難しくなっています。
これらの全てを考慮するのは時間がかかりますが、UIライブラリには「普遍的な要件としてはこれ」というおおよその要件が網羅されています。標準搭載されている機能を中心に据えることで、UIに関する要件も開発者ごとにバラついたりせず、結果的にポリシーが統一されたUIを維持できます。
4. クロスブラウザ・クロスデバイス対応
OS・ブラウザ・デバイスといったプラットフォーム環境も多様化しています。あらゆるプラットフォーム快適UIを実現するには、デバイスごとの情報量やUIの実装など、様々な点を考慮しておく必要があります。
例えば、PC向けのデータ一覧(テーブル)をモバイル対応する際、横スクロールが長くなりすぎる問題をどう解決するか、スクロールバーを表示して範囲外のデータがあることを示すべきか、そのサイズは適切か、といった検討が必要になります。
こうした考慮課題に向き合っていると、時間を無尽蔵に浪費してしまいますが、UIライブラリを活用すれば、開発者はすべての要件を個別に考慮せずとも、先ほどのデータ一覧表示UIなども最新の環境に適応したUIを実現できます。
5. 保守コストの低減
UIライブラリの導入でメリット1~4を享受した副産物として、保守コストも低減することができます。あらかじめ統一されたコンポーネントを使用することで、ソフトウェア全体でコードの一貫性が保たれ、「簡潔で読みやすい」コードを維持できます。
例えば数年を経て保守担当者が変わっても、引き継ぎ後のキャッチアップがしやすいです。
UIライブラリを使うデメリット
メリットと表裏一体、UIライブラリを導入するデメリットも存在します。導入する際には、これらのデメリットを把握した上でなるべくリスクを回避できるUIライブラリを選定することが大変重要です。
1. カスタマイズの制約
UIライブラリはあらかじめ設計・開発された部品を再利用する仕組みのために自由度は制限され、100%自社の要件にマッチするUI部品を作成することは難しくなります。特に自社独自の操作フローやブランドイメージを重視する場合は、細かいスタイルのカスタマイズを行おうとするとUIライブラリの仕様に縛られ、かえって開発工数が増大する可能性があります。
2. 学習コストがかかる
現在のUIライブラリは、単独で機能することは少なく、さまざまな周辺技術との連携が必要です。UIライブラリを使いこなすには複数の専門技術を組み合わせて適切に運用するスキルが求められますが、日本語のドキュメントが不完全であることも多いです。提供される公式ドキュメントや海外の技術記事を読み解きながら進行すると、導入の初期コストがある程度かかってしまう点はデメリットです。
3. ライブラリの寿命
UIライブラリには流行があって、現在主流とされているものが5~10年後に最適であるとは限りません。特にOSS(無償)で提供されているUIライブラリを業務システムに適用とした場合、予期せぬ変更や突然の保守終了が発生するデメリットが発生します。
UIライブラリの主な種類と選定基準
あなたにとってベストなUIライブラリは何でしょうか。プロジェクトの目的や開発チームのスキルセットによって、適切なライブラリは異なります。ここでは、UIライブラリの主要な分類と、それぞれの選び方について解説します。
フル機能型 vs 軽量型
フル機能型は豊富なコンポーネント(部品)が揃っており、すぐに開発が進められるために短期間で開発したい場合はフル機能型がおすすめです。逆に、柔軟にデザインを変えたい、カスタマイズを優先するために開発の自由度を高めたい場合は軽量型が良いでしょう。
タイプ | ライブラリ名(または提供社) | 特徴 |
---|---|---|
フル機能型 | Ignite UI | 数百の部品を有する完全ライブラリ。商用サポートあり。 |
フル機能型 | Material-UI(MUI) | 豊富なコンポーネント、カスタマイズ性が高い。 |
フル機能型 | Ant Design (AntD) | 高度なカスタマイズ性と洗練されたデザインが特徴。 |
フル機能型 | Prime React | 美しく直感的なUIで WCAG 2.0 に準拠したアクセシビリティも強み。 |
軽量型 | Chakra UI | 直感的に扱えるAPIと柔軟なカスタマイズが特徴。 |
軽量型 | Tailwind UI | ユーティティファーストのCSSフレームワーク。 |
軽量型 | Headless UI | 見た目のスタイルを持たず、インタラクティブな部品を提供。 |
開発者指向 vs デザイナー指向
迅速な開発や機能実装を重視して、ソフトウェアのリリース期間を短縮する開発者志向のUIライブラリと、デザインの柔軟性やブランド表現を重視するデザイナー志向のUIライブラリがあります。特に見た目の独自性が問われない業務システムにおいては、開発者志向のUIライブラリが重視されます。
タイプ | ライブラリ名(または提供社) | 特徴 |
---|---|---|
開発者志向 | Infragistics | 数万件のデータ表示パフォーマンスなど、開発者に完全特化。 |
開発者志向 | React Bootstrap | レスポンシブなUIを簡単に構築できる。 |
開発者志向 | Blueprint | データ重視のアプリケーション向けに最適化。 |
開発者志向 | Mantine | 豊富な部品とフックを揃え、高速な開発を支援。 |
デザイナー志向 | Framer Motion | スムーズで直感的なアニメーションを実装できる。 |
デザイナー志向 | Fluent UI | Microsoftのデザインシステムを基にしたUIライブラリ。 |
デザイナー志向 | Radix UI | スタイルレスで柔軟性が高く、アクセシビリティを重視。 |
有償(商用)ライブラリ vs 無償(オープンソース)ライブラリ
有償ライブラリはエンタープライズ向けの高度な機能や公式サポートが提供されており、大規模開発や長年維持したいソフトウェアの開発に適しています。ライセンス料がかかるので配布ライセンスや更新ライセンスの費用で比較される場合が多いです。一方、無償ライブラリはオープンソースで自由な利用ができますが、サポートはコミュニティ頼りになることが多いです。
タイプ | ライブラリ名(または提供社) | 特徴 |
---|---|---|
有償ライブラリ | Infragistics | 一覧表示の階層化・多段化などグリッド部品の強みと開発者に優しいライセンス体系。 |
有償ライブラリ | MESCIUS | Excel出力などの帳票開発機能を網羅するライブラリ製品群。 |
有償ライブラリ | Syncfusion Essential Studio Enterprise | ビジネスインテリジェンス用コンポーネントなどを含む総合スイート。 |
有償ライブラリ | Kendo UI | 強力なデータ可視化部品を備えるUIライブラリ |
無償ライブラリ | ShadCN UI | シンプルで拡張性が高く、React向けの美しいUIライブラリ。 |
無償ライブラリ | Evergreen | エンタープライズ向けにも適したUIライブラリ。 |
無償ライブラリ | Grommet | レスポンシブデザインに優れたモバイルファーストなUIライブラリ。 |
有償UIライブラリの選定基準
特に業務システムの開発と保守を前提とした場合、商用サポートがされている有償UIライブラリが第一選択肢となるでしょう。その際は、下記のような点が選定基準となることが多いです。選定の際は、提供社へ確認しておくことが望ましいでしょう。
- サポート: 公式サポートは電話やチャットでされているか。定的なアップデートと長期的なメンテナンスの保証はされているか。
- 機能の充実度: データグリッド、チャート、フォームなど、ビジネス要件を満たす高度な部品が一式含まれているか。
- パフォーマンス: 大規模なデータ処理やパフォーマンスの最適化はどうか。動作が重たくなく、業務のストレスにならないか。
- ライセンス形態とコスト: 購入形態はサブスクか買い切りか、ライセンスは開発者・サーバーライセンスどちらもかかるのか、また年間更新費用はいくらか。
- アクセシビリティ: UIライブラリとしての品質はどうか。特に色覚対応などを含むユニバーサルデザインを前提としたWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)に準拠しているか。
UIライブラリは試用期間を設定しよう
候補となるUIライブラリは実際にトライアル期間を経て、実際に触って比較検討されることをお勧めします。またトライアル期間の中でサポート対応がされている場合は、技術上の課題を聞いてしまうことが望ましいでしょう。
インフラジスティックスのUIライブラリは30日間の無料トライアルを提供しています。トライアル期間中はウォーターマークが表示される以外、製品版と同様の機能をお試し可能です。また無料のテクニカルサポートも付属しています。
- 手順1:トライアルページから無料トライアルを開始します。
- 手順2: 製品によって提供形式が異なるので、プラットフォームに応じた形式で取得する。(NuGetを使用する場合やnpmを通じたインストールの場合がある)
- 手順3:製品の評価を開始します。
- 手順4: 評価期間中、製品の利用方法で不明な点があればカスタマーポータル(製品マイページ)からオンラインサポートが利用できます。
まとめ|UIライブラリ導入で開発効率を上げよう
ここまでお読みいただきありがとうございました。本記事では、UIライブラリの基本概念から最新の利用動向、導入メリット・デメリット、選定基準までを詳しく解説しました。
UIライブラリの導入が開発率向上に繋がることは間違いありませんが、さらに重要なのはプロジェクトに最適なUIライブラリを選定することです。プロジェクトの目的やチームのスキルに応じて最適なライブラリを選定し、よりスムーズな開発を実現しましょう。
インフラジスティックスでは「選定に重視すべき項目が分からない」「プラットフォーム自体選定しかねている」といった、UIライブラリを選定する段階のサポートも実施しています。
さらに踏み込んだアドバイスが必要な場合は、プロジェクト状況を踏まえた具体的な提案も可能です。フロントエンド領域に精通するソリューションコンサルタントが対応させていただきます。
【詳しい相談はこちら】無料相談会 (コンサルタントが直接オンライン会議でプロジェクト状況をお伺いし、最適な形を提案します)
*1:最も利用率が高いであろうReact: JavaScriptに興味のある開発者を対象に調査された State of JavaScript 2024 参照
*2:月次で1,080万ダウンロード: 2021 in review and beyond - MUI 参照
*3:週次で580万ダウンロード: MUI: The React component library you always wanted